レモン。
爽やかな香りと太陽の光をそのまま吸収して再現したような色、つややかな薄い皮と酢とは異なる優しい酸味、その全てが淡い思い出を彷彿させる (?!) それはそれは素敵な果実。日本ではファーストキスはレモンの味 (だいぶ古いっ?) なんていう表現もあるし、青春や清涼感を連想させるプラスイメージの果物だと思う。
ところがそのレモン、欧米ではマイナスイメージで使用されるケースが多いことを随分大人になってから知った。具体的には "欠陥品" や "魅力のないもの" という意味で使用されるそう。更にはこんなことわざまで存在している。
"when life gives you lemons, make lemonade." ( "逆境をうまく利用せよ" )
なるほど。逆境をうまく利用せよ = 酸味の強過ぎるレモンには砂糖をたくさん足して、爽やかなレモネードにしてしまおう、といういかにもアメリカ人らしい言い回しに感心してしまう。そういえば洋書には物語の中でレモネードが登場することがよくある (例えば、スヌーピー率いるピーナッツ) けれど、こういうイメージが関係していたりして . . . 。
そんなことはさておき、このことわざを知ってから更に時が経った先日、スーパーで買い物をしていた。出掛け際に電話で話していた母親と些細なことで言い合いになってしまった。朝、お気に入りのカップも割ってしまったし、連日の寝不足も手伝って落ち込み度はマックス。
{ どうしてこうも嫌なことは重なるものなのか . . . }
そんなことを心の中でつぶやいたそのとき、通りかかった青果コーナーの文字が目に飛び込んできた。
「特売 無添加レモン」
近付いて品物を見てみると、均一な美しい黄色に程よいつやのある皮。重みもしっかりある。と同時に例のことわざが過る。
{ レモネードではないけれど . . . }
実は、最近ハマっているケーキ作りの次のお題にと企んでいた (悪いことではない?!) のがレモンのタルトだったのだ。特売になっているレモンを暗示と受け、この機会に計画を実行することにする。
家に着くや否や、早速作業に没頭。レモンをギュッと絞り、皮を丁寧にすりおろす行程でキッチンに広がる爽やかな香りでリラックスし、更にはタルト生地のpâte sucréeをしかり綿棒で延ばし、メレンゲを懸命に泡立てていると忘れていく。怒りも悩みも疲れも . . . 。
仕上げの行程に入る頃には肩の力が抜け、タルトを冷蔵庫で冷やし終え、お茶を入れる頃にはすっかり気分もリフレッシュされていた。ちなみに肝心なタルトのお味はというと、柑橘系の果物好き、更には大のタルト好きの個人的な意見になってしまうが、初トライにしては我ながら美味。(使用したレシピが良かっただけなんていう噂もあるけれど . . . )
why don't we . . . make lemon tartelettes when life gives us lemons?
生きていると辛いことや悲しいこともある。面倒なことや投げ出したいことも。でもそんな時は、負のスパイラルに自分を陥れる前に、その時間を普段はなかなかできない何かに没頭するチャンスと捉える柔軟性を身につけたい。ことわざの本来の意味とは少々異なるけれど、自分なりの逆境を乗り越えさせてくれる "レモネード" を模索したい。
今回はこのレモンのタルトだったけれど、次の逆境の際にはレモンのバタークリームで飾るレモンケーキを作ろうと狙っている。
* { lemon tartelettes adapted from : miette by meg ray with leslie jonath — lemon tartlettes }
— レモンタルトレットのレシピは以下 :
{ ingredients } 直径9cmのタルト型6個分
< タルト生地 / pâte sucrée >
薄力粉 240g
グラニュー糖 30g
塩 小さじ1/4
無塩バター 110g (冷えたまま、角切りにする)
卵黄 大1個
生クリーム 大さじ2
< レモンカード / lemon curd >
グラニュー糖 100g
レモン汁 60ml
レモンの皮 大さじ1/2
卵黄 4個
無塩バター 50g (角切りにする)
{ how to }
1. タルト生地を作る。大きめのボウルに薄力粉、グラニュー糖、塩を入れて混ぜる。無塩バターを加え、ゴムベラで切るように混ぜる。ある程度バターが細かくなったら、指でバターと粉類をすり合わせてポロポロのそぼろ状にする。
2. 小さめのボウルに卵黄と生クリームを入れ、混ぜ合わせる。1に加えて手早く混ぜ、生地をひとまとめにする。まとめた生地をしっかりラップで包み、冷蔵庫で1時間以上寝かす。
3. バター又はサラダ油(分量外)をタルト型に薄く塗り、薄力粉(分量外)をまぶし、逆さまにして余分な粉が落ちるよう、しっかりはたく。2の生地を6等分し、打ち粉(分量外)をした台にのせ、麺棒でタルト型の大きさに合わせて6mm厚さに伸ばす。タルト型に敷き込み、周囲の余分な生地をナイフ等で切り落とす。フォークで底に何カ所か穴を開け、その状態のまま冷凍庫で30分-1時間寝かす。
4. オーブン皿に冷凍庫から出したタルトを並べ、180℃に予熱したオーブンで30分前後きれいな焼き色がつくまで焼き、網の上で冷ます。
5. レモンカードを作る。耐熱のボウルにグラニュー糖、レモン汁、レモンの皮、卵黄を入れ、混ぜ合わせる。ボウルを湯煎にかけ、もったりするまで更に混ぜる。
6. こし器を通して5を清潔な密封容器に入れ、人肌より少し熱い50-60℃まで冷ます。そこに無塩バターを加え、泡立て器又はハンディミキサーでバターの固まりがなくなるまで混ぜる。レモンカードの表面に直接ラップをかけ(膜ができるのを防ぐため)、冷蔵庫で冷やす。
7. 4の完全に冷めたタルトに6のレモンカードをすくい入れ、冷蔵庫でよく冷やして(最低でも1時間)完成。
{ tips }
- タルト生地を型に敷き込み、周囲の余分な生地を落とす際、麺棒を型の淵の上で軽く転がすと簡単に切り落とすことができる。また、型に敷いた生地を冷凍庫で寝かすことにより、焼く行程での縮みを防ぐことができる。
- タルトを焼く時間はオーブンによって異なるため、注意を払う。mietteのレシピでは350°F(約180℃)で10-12分としているため、最初の10分で一度様子を見て焼き時間を調整する。
- レモンカードはよく冷やしてからタルトに入れるのがポイント。またレモンカードは密封された状態で、冷蔵庫で約1週間、冷凍庫で約3ヶ月、保存することが可能であるが、冷凍保存でない場合は新鮮な状態で使用するのがおすすめ。
- レモンカードをすくい入れる代わりに絞り袋(大きめの丸口金を使用)でタルトに入れても綺麗に仕上がる。
- 完成したレモンタルトを冷蔵庫で一定の時間冷やすことにより、タルトとレモンカードが馴染む。但し、食べる際には室温に戻すのがおすすめ。
* 写真no.5は{ call me cupcake — lemon meringue pie }のレシピを使用
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