日本には美味しいケーキ屋さんがたくさんあるからという理由で、ケーキなんぞ自分で焼いてみようと思ったこともなかった。海外で生活をしていた子供の頃こそ、母が焼いてくれるショートケーキや洋梨のタルトはどこのお店のケーキよりも美味しく、作ってもらえるとかなり嬉しかったけれど、日本に帰国してからは (そしてついでに言うと、あれから十何年も経っている今) 、デパ地下に行けば 「美味しそうでしょ〜、食べてみたいでしょ〜、よかったら連れて帰らな〜い」 と訴えかける繊細で素敵なケーキがシックにディスプレイされているし、ご近所にも美味しいパティスリーはある。だから小麦粉とバターまみれになって、自分で苦労して作ることなんてないのだ。
ところが、ネットサーフィン中にとある美しいフードブログに巡り合ってからその考えが一変した。
"what katie ate" — オーストラリア在住のkatieさんが綴るそのブログは、プロではない人が作ったとは思えない素敵過ぎるお料理が、臨場感溢れる写真で描写されている。完全にノックアウト。私もこんな美しい食べ物を作って (おっと、食べて) みたいんですけどっ!!
"what katie ate" — オーストラリア在住のkatieさんが綴るそのブログは、プロではない人が作ったとは思えない素敵過ぎるお料理が、臨場感溢れる写真で描写されている。完全にノックアウト。私もこんな美しい食べ物を作って (おっと、食べて) みたいんですけどっ!!
影響されやすく、良く言えば行動派、悪く言えばただ単純 (おまけにかなり飽きっぽいなんていう噂もあるけれど?!) 、完全に画面に映し出される写真から漂う香りの幻覚に後押しされて彼女の "pear and cinnamon frangipane tartlets" (洋梨とシナモンのフランジパーヌタルトレット) にトライしてみる。ところが、かなりレシピに忠実に作業したつもりだったのに、予想以上に画面の向こうの素敵な洋梨のタルトレットを再現するのは難しい。味もいまひとつ。
{ ゲッ! . . . なんで? }
首を傾げつつ、めげずに日を改めて再度チャレンジ。うーん、味はイメージ (あくまでも妄想の) に近付いたけれど、どうもフィリングのフランジパーヌがオーブンで焼く行程で溢れ出てしまって、カッコ悪い。これはいかん。でもここで諦めるわけにはいかない。昔から "程々に" ということができないこの性格、誰かなんとかしてやってっ。
毎回、出来損ないの試食 (いや、処理 . . . ?) を強いられる家族からの懇願により、一週間以上間を空け、更に洋梨をリンゴに代えて、三度目の挑戦をする。
フィリングは詰め過ぎず均一に、フルーツは可能な限り薄くスライス。呪文を唱えるように、ぶつぶつ自分に言い聞かせ、オーブンへ。そして、いよいよ焼き上がり。祈るようにオーブンの扉を開けると、そこにはフィリングの溢れ出ていないタルトがお行儀よく並んでいる。これって、ついに成功かしらん?!
まぁ、実際のところはまだだいぶ改善の余地ありだけれど、一先ず納得のできるものができた。なんて長い道のりだったのだろう。
why don't we . . . bake apple tartlets?
結局はリンゴのタルトレットになってしまったし、手間も時間も掛かって正直買っちゃった方が美味しいかも . . . なんて考えが頭を過ったのも一度ではなかったけれど、何とも言えない達成感が嬉しかった。katieさんのような美しい出来上がり (ついでに絶妙なスタイリングの写真) までは程遠いけれど、こんな時間の過ごし方も悪くないと思えるきっかけを作ってくれたkatieさんに感謝。次は、毎晩妄想で香りが漂ってくるまで読み込んでいるkatieさんの素敵なレシピ本の中の "バターミルククレープとシトラスコンポートのローズマリーハニー添え" に挑戦しようと計画中。
* { apple tartlets adapted from : what katie ate — pear and cinnamon frangipane tartlets }
— リンゴのタルトレットのレシピは以下 :
{ ingredients } 直径9cmのタルト型10-12個分
< タルト生地 / pâte sucrée >
薄力粉 200g
塩 ひとつまみ
粉砂糖 50g
バター 80g (冷えたまま、角切りにする)
無塩バター 40g (冷えたまま、角切りにする)
バニラエッセンス 少々
卵黄 2個
冷水 大さじ2
< フィリング / frangipane >
無塩バター 70g (室温に戻しておく)
上白糖 75g
卵 1個
バニラエッセンス 小さじ1/2
アーモンドミール 100g
粉末シナモン 小さじ1/2
< その他 >
リンゴ 2個
粉末シナモン 適量
グラニュー糖 適量
粉砂糖 飾り用
クリーム 飾り用
{ how to }
1. タルト生地を作る。大きめのボウルに薄力粉、粉砂糖をふるい入れ、塩、バター類(バター、無塩バター)、バニラエッセンスを加え、ゴムベラで切るように混ぜる。ある程度バターが細かくなったら、指でバターと粉類をすり合わせてポロポロのそぼろ状にする。
2. 1に卵黄と冷水を入れて手早く混ぜ、生地をひとまとめにする。まとめた生地をしっかりラップで包み、冷蔵庫で2時間以上寝かす。
3. フィリングを作る。無塩バターと砂糖をボウルに入れ、全体的に白っぽくクリーム状になるまで泡立て器ですり混ぜる。溶いた卵にバニラエッセンスを加えたものを入れてよく混ぜ、更にアーモンドミールとシナモンを加え、さっくり混ぜる。
4. バター又はサラダ油(分量外)をタルト型に薄く塗り、薄力粉(分量外)をまぶし、逆さまにして余分な粉が落ちるよう、しっかりはたく。2の生地を10-12等分し、打ち粉(分量外)をした台にのせ、麺棒でタルト型の大きさに合わせて4-5mm厚さに伸ばす。タルト型に敷き込み、周囲の余分な生地をナイフ等で切り落とす。
5. 3のフィリングを4で用意したタルト型に分け入れる。パンにバターを塗る要領でフィリングをナイフでタルト型に8分目まで詰める。
6. リンゴはよく洗い、末広切り※にする。タルト1個に対して、末広切り1セットの半分をフィリングの上に扇形に広げて飾る。仕上げに粉末シナモンとグラニュー糖をひとつまみパラパラと上にのせる。
7. オーブン皿にタルトを並べ、200℃に予熱したオーブンで30分前後焼く。しっかり中まで火が通り、タルトの外側にきれいな焼き色がついたら完成。食べる直前に粉砂糖を上にふるい、好みでクリームを添える。
※{ 末広切り }
参考 : リンゴの末広切り
1. リンゴを端から1/3切り落とし、切り落とした1/3の切断面を下にして端から2mm幅に切る。飾る際にスライスを少しずつ扇形にずらして使用するため、バラバラにならないよう注意しながら切るのがポイント。これを末広切り1セットとする。
2. 残ったリンゴ2/3の反対側も同様に1/3切り落とし、同じように末広切りにする。
3. 残ったリンゴ1/3は皮のついている両サイドを切り落とし(芯だけを残す)、皮を上にして端から2mm幅に切って使用する。
{ tips }
- タルト生地を型に敷き込み、周囲の余分な生地を落とす際、麺棒を型の淵の上で軽く転がすと簡単に切り落とすことができる。
- フィリングをタルト型に分け入れる際、入れ過ぎないよう注意する。オーブンで焼く際に溢れ出てくるため、少なめに入れると綺麗に仕上がる。
- katieさんのレシピ通り、リンゴを缶詰の洋梨や熟した洋梨に代えても美味しくできる。
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