食べ物の好き嫌いは少ない方だと思う。お子様の嫌いな食べ物ランキングで上位を占めるピーマンやセロリといった野菜はもちろんのこと、大人でも好き嫌いが分かれやすいウニ、生牡蠣、光り物等の魚介類も好物で、必要に迫られれば、食べられるものがほとんどである (あ、言うまでもなくこれ大人として当たり前?)。これは「嫌いなものを無理に食べさせない」という母の方針のおかげだと思っている。嫌いだった食べ物に対する子供の頃の嫌な記憶が残らないため、大人になって再度トライする抵抗が少なかったのではないかとにらんでいる。もちろん、予測に過ぎないのだけれど、一応ここは母に感謝することにしている。
だけれど、やはり苦手な食材や、自ら進んで選ばない食材というものはある。特に大人になってからの方が、食の幅が広がるせいか、そういうものに出くわす回数が多くなった。例えばチーズ。子供の頃から慣れ親しんでいる、スライスチーズやさけるチーズの類いは問題ないのだけれど (レパートリーが少なくて、ごめんなさい)、フレンチレストランで仰々しく運ばれてくる非常に香しい、珍しいチーズなんかは気を付けて選ばなければ、そこまでの美味しかった食事の記憶全てを台無しにしてしまいかねない、とんでもないことになる。
そもそも、乳製品というものに興味がない。牛乳は、子供の頃生活をしていた海外から帰国以来、現地のものと日本のものとでは味 (濃度) が異なることから苦手になり、料理で使用する以外に飲むことはほぼ皆無と言えるし、ヨーグルトも滅多に食べない。パスタもクリーム系のものよりも断然トマト系や塩/オイル系に軍配が上がる。シチューもミルキーなクリームシチューも嫌いではないけれど、ビーフシチューやポトフの方がほっとするのが本音で、バターソテーなんぞは自分では絶対に作らないもののひとつ。我が家の炒め物はオリーブオイルが基本ですっ。
ところが、彼はというと生粋のチーズ好き。人と人とが長いこと上手に付き合っていくための大切なポイントはいくつかあると思うけれど、食事の好みはそのひとつだと私は人生の早い段階から悟っていた。だから、フランス人の友人のホームパーティーで出される、本場仕込みのチーズも顔色ひとつ変えることなく (というより、突然目を輝かせはじめ) ありがたくいただき、外食時にチーズセレクションなんぞあれば必ず頼む彼との相性は、正直疑わしいものだった。聞いた話だと、独り身の頃はデパ地下で買い込んだチーズとワインを自宅で一人で楽しんでいたらしい。一体、何気取りなのだろう? 全くついていけない . . . 。
しかし、人間とは不思議なもので、一緒にいればなんとなく似てくるものだ。チーズをかなり美味しそうに食している彼を何度も見ているうちに、実は何か素晴らしい食のチャンスを逃しているのではないかと心配になり始めた。そしてついに彼につられて、たまにつまむようになり、さすがにたくさんは食べないけれど、最近では好きと言えるチーズの種類も増えた。
そんな経緯から、今までは見向きもしなかったリコッタパンケーキのレシピを先日見つけたときにはガッツポーズが出た。世界一の朝食で有名なかの "bills" で、湘南の海を眺めながらこのパンケーキを食べてから、チーズ入りのパンケーキに対する偏見 (パンケーキにまでチーズ入れる必要ある? というもの) は一気になくなり、好物となったのだ。このパンケーキは、熱々に粉砂糖をふるって、メープルシロップやバターにフルーツというスタンダードな食べ方も美味しいけれど、今回はカナペを作ってみた。
why don't we . . . rethink our least favorite foods? {嫌いな食べ物について考え直してみませんか?}
残念ながら、今でも彼のような生粋のチーズ好きではないけれど、それなりに楽しめるようになった。さて、次はパクチー好きの友達でも探そうかしらん?
* { ricotta pancake canapés adapted from : elle à table, issue no.66 march 2013 — レモンカード‧ホットケーキ / 鮭のカナペ仕立て }
— リコッタパンケーキの鮭のカナペのレシピは以下 :