そもそものきっかけは久しぶりに手に取った輸入物のチョコレートケーキのミックスだった。
子供の頃から何の疑問も持たずに食べてきたケーキミックス。サラダオイルと卵を加えて混ぜるだけのケーキミックス。濃厚なチョコレートのケーキミックス。ところが、その万能ケーキミックスを使用したケーキが焼き上がって食べてみると何かが違う。ん? 頭の中で思い描いていた味よりも美味しくない。箱の裏に書いてある手順を確認するが、特に間違えてはいないよう。
「なんだかいまいちね。昔は結構美味しいと思っていたけれど、やっぱりミックスはミックスよ」母が心の声を代弁する。
「しばらく食べない間に舌が肥えちゃったのね」
そうか、変わったのはケーキではなくてこちらね。確かに帰国してからは繊細な日本のケーキや複雑で洗練された欧州ケーキを幾度と口に運んできたけれど、たった数年でこんなにも味覚が発達するとは . . . 。ちょっとした衝撃だった。
以前、味覚というのは乳幼児期に形成されると聞いたことがあるけれど、もしそれが本当だとしたら我が弟はアウト (味覚音痴寄り) だと思う。彼は海外で生まれ、離乳食も全て現地のドクターに指定されたスーパーの瓶詰めだったので、出汁やうまみ等の繊細な味をこの味覚形成期に経験していない。そして実際に大人になった今でも、お吸い物や煮物といった薄味で繊細なお出汁の味を楽しむ料理はパスする。少し不憫なやつだ (大きなお世話だと言われそうだけれど)。その点、自分自身は母お手製の離乳食で育ったし、セーフだと思いたい。そのセーフな私 (ここはあくまでも譲らないつもり) が美味しいと太鼓判を押していたケーキだったのに、今改めて食べるといまいちだ。これって私も弟同様アウト?! いや、正確にはアウトだったけれど、ミックスで作ったケーキで満足できなくなったということは進化してギリギリセーフ?
話が脱線してしまったけれど、どうしてもイメージしていた濃厚な "美味しい" チョコレートケーキが食べたくて、今回このレシピに辿り着いた。もちろん日本には素晴らしいチョコレートケーキがたくさんあるし、デパ地下なんかに行けば迷えるほど選択肢がある。個人的にはガトーショコラが好きだけれど、つやつやのガナッシュでコーティングされたものや、コーヒーのほろ苦さとの組み合わせが絶妙なオペラも素敵だ。それでも時々無性に食べたくなるのが、このザ‧アメリカン‧クラシックなチョコレートの味しかしないチョコレートケーキ。
why don't we . . . bake a piece of heaven?
ちなみに、英語でチョコレートのことを "a piece of heaven" とか "heavenly" なんて表現することがある。あの濃厚な甘さが天国の味 (心地) として連想されるのかもしれない。だから今回のレシピで紹介するようなチョコレートの味しかしないチョコレートケーキを食べると、いつもこのフレーズを思い出してしまう。よろしければ意識が朦朧とするような甘〜い天国の味、焼いてみませんか?
* { the chocolate cake adapted from : the vanilla bean blog — the chocolate cake }
— チョコレートケーキのレシピは以下 :
{ ingredients } 直径10cmのケーキ2個分、又は直径15cmのケーキ1個分
< チョコレートスポンジ >
薄力粉 105g
グラニュー糖 160g
ココア 40g
ベーキングソーダ 小さじ1
ベーキングパウダー 小さじ1/2
塩 小さじ1/2
牛乳 120ml
レモン汁 小さじ1
サラダ油 60ml
卵 1個
バニラエッセンス 小さじ1/2
コーヒー 120ml
< チョコレートバタークリーム >
スイートチョコレート、又はダークチョコレート 85g
無塩バター 100g
卵黄 1個
バニラエッセンス 小さじ1/2
粉砂糖 62.5g
{ how to }
1. ケーキ型の準備をする。バター又はサラダ油 (分量外) をケーキ型 (直径10cmのものを4つ用意) の内側に薄く塗り、ココア (分量外) をまぶし、逆さまにして余分な粉が落ちるよう、しっかりはたく。
2. チョコレートスポンジを作る。小さめのボウルに牛乳の半量 (60ml) とレモン汁を入れ、5分ほどおく。
3. 大きめのボウルに薄力粉、ココア、ベーキングソーダ、ベーキングパウダーをふるい入れ、更にグラニュー糖、塩を加え、さっくりと混ぜ合わせる。
4. また別のボウルに2と残りの牛乳、サラダ油、卵、バニラエッセンスを入れ、混ぜ合わせる。
5. 4の液体を3の乾いた材料にゆっくり混ぜ入れ、混ぜ合わせたらコーヒーを入れて軽く混ぜる。この混ぜる工程でしっかりボウルの底に材料が残らないよう注意する。ゴムベラを使用すると上手にできる。
6. 1で用意したケーキ型4つにに5の生地を均等に流し入れる。
7. 170℃に予熱したオーブンの下段で30分前後、竹串を中心に刺して生地がついてこなくなるまで焼く。焼き上がり後、30分ほど型に入れたまま冷まし、その後、底を上にして型から出して網の上で冷ます。
8. チョコレートバタークリームを作る。耐熱のボウルに荒く刻んだチョコレートを入れ、ボウルを湯煎にかけてチョコレートを溶かす。完全に溶けたら湯煎からはずし、室温に戻るまで冷ます。
9. 別のボウルに無塩バターを入れ、全体的に白っぽくふんわりするまで泡立て器ですり混ぜ、卵黄とバニラエッセンスを加え更に混ぜ合わせる。更に粉砂糖を徐々に加え、なめらかになるまで混ぜ続ける。
10. 9に8の溶かしたチョコレートを泡立てないよう注意しながらゆっくり混ぜ入れる。
11. ケーキを仕上げる。7の完全に冷めたチョコレートスポンジは、上部が平らでない場合は平らになるよう余分な部分を切り落とす。スポンジのひとつをケーキ台又はお皿に載せ、上に10のチョコレートバタークリームをぬる。上にスポンジをもうひとつ重ね、チョコレートバタークリームを側面と上部に薄く、均一にぬり、1時間ほどおく (チョコレートスポンジはポロポロとスポンジが剥がれ落ちやすいため、薄くコーティングすることで細かいスポンジを中に閉じ込めると仕上がりが綺麗になる)。クリームがある程度乾いたら、更に側面と上部にクリームを均一に塗って完成。残りのスポンジでも同じ作業を繰り返し、2つのケーキを完成させる。
{tips}
- 直径15cmのケーキ型を使用する場合は、4つではなく2つ用意する。
- ケーキ型に流し入れる生地は、通常のスポンジケーキの生地よりも液体に近い状態である点に留意する。
- ケーキは冷蔵庫で保存する場合も、食べる際には室温に戻してから食べるのがおすすめ。またチョコレートスポンジはそのまま、又はチョコレートバタークリームの代わりに生クリームを添えて食べても美味しい。
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